犬や猫の膿皮症

犬や猫の皮膚の痒みの原因となる、膿皮症の化膿性皮膚疾患について

犬や猫の膿皮症について

膿皮症は、皮膚の常在菌が過剰に繁殖しすぎる事によって、皮膚の炎症や痒みなどの症状が引き起こされる、皮膚の細菌感染症です。

 

主な原因菌は、皮膚にもともと存在している弱毒性黄色ブドウ球菌ですが、大量に繁殖すると、黄色い色素とともにエンテロトキシンと呼ばれる毒素を大量に作り出すために、皮膚炎や胃腸炎の原因になる事が知られています。

 

そのため、皮膚で大量に繁殖すると、皮膚の病変部には、黄色い膿を含んだ湿疹やかさぶたが見られるようになり、発赤や炎症が起こるようになります。

 

犬や猫の皮膚病の原因としては、比較的多い傾向にあり、じめじめと蒸し暑くなる春から夏にかけた季節において、最も発症しやすくなると言われています。

犬や猫の膿皮症の原因

膿皮症は、黄色ブドウ球菌などの常在菌が過剰に繁殖しすぎたために引き起こされる病変です。

 

クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)や甲状腺機能低下症などのホルモン分泌異常や、糖尿病、肝臓病、腎臓病などの慢性疾患によって、免疫力が弱まっている場合には、皮膚の抵抗力が低下して、このような感染症にかかりやすくなります。

 

皮膚や被毛に、皮脂や垢などの汚れが多く溜まっていたり、被毛が水に濡れたままじめじめした状態になっている場合にも、皮膚の常在菌が繁殖しやすくなります。

 

また、栄養分の偏りやストレス、シャンプーや駆虫薬による炎症が、膿皮症などの皮膚疾患を誘発してしまう場合もあります。

 

他にも、ノミやダニなどの寄生虫感染によって皮膚の痒みが引き起こされ、掻き傷や咬み傷ができた所に二次的な細菌感染が起こる事もあります。

 

もともとアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患がある場合には、黄色ブドウ球菌の作り出す毒素によって、皮膚の痒みなどの症状がますますひどくなったり、治りにくくなるなど、アレルギーの悪化因子になる事が知られています。

犬や猫の膿皮症の症状

犬や猫が膿皮症にかかると、皮膚の一部に膿を含んだ湿疹が現れたり、その周囲からはフケや垢がよく出るようになります。

 

最初のうちは、痒みの程度は軽い場合が多いですが、細菌の繁殖が毛穴や皮下にも及んでくると、皮膚の炎症がひどくなり、皮膚が赤く腫れたり、被毛が抜け落ちるようになり、痒みの程度も強くなっていきます。

 

痒みがひどくなると、犬や猫は何度も痒い部分を引っ掻いたり、噛み付く事を繰り返すようになるため、皮膚が傷付いてしまい、出血が起きたり、かさぶたが見られるようになります。

 

膿皮症の症状が治らないまま、慢性的に痒みが続いている場合には、皮膚が何度も掻き壊されては修復する事が繰り返され、やがて皮膚が厚く硬くなってしまったり、色素沈着を起こして黒ずんだようになる場合があります。

 

このような皮膚の病変は、全身のどこにでも発生する可能性がありますが、顔、顎の下、脇、指の間、股下、下腹部、背中、尻尾の周囲など、汚れが溜まりやすい部分に生じやすい傾向にあります。

犬や猫の膿皮症の治療

膿皮症の治療は、主に抗生物質の飲み薬の投与が行われます。

 

症状が軽い場合には、薬用シャンプーによる患部の洗浄や、薬浴による全身洗浄だけを何度か行っているうちに、自然に治まっていく場合もあります。

 

引っ掻き傷や咬み傷がひどい場合など、皮膚があまりにも傷付いている場合には、皮膚洗浄を行う事で、ますます炎症がひどくなってしまう可能性があるため、刺激の少ない消毒薬だけを使用する場合もあります。

 

そして、患部の通気性を良くするために、病変が生じている箇所の被毛を短くカットしたり、刈り上げる事もあります。

 

皮膚の病変が長い間治まらず、長期化している場合には、耐性菌の発生や他の病気の可能性を疑い、顕微鏡検査、 血液検査、病理検査などの詳しい検査が行われる場合もあります。

 

ホルモン分泌異常、アレルギー、ノミやダニの感染といった、膿皮症を悪化させる他の病気が確認できた場合には、その治療も同時に行われます。

犬や猫の膿皮症の予防

膿皮症は、皮膚の常在菌が過剰に繁殖したために起こる皮膚の感染症ですので、普段から犬や猫の体を清潔に保つように注意しておく必要があります。

 

口元は、ご飯の食べカスが残りやすく、飲み水で被毛が湿ったままになる事が多い場所ですので、スキンシップの度に汚れの有無を確認するようにして、雑菌の繁殖を予防するように注意する事が大切です。

 

下腹部や尻尾の周囲は、尿や便などの排泄が付着するなどして、汚れが残りやすい部分ですので、こまめに拭いてきれいにしたり、被毛が長い場合には短くカットして通気性を良くしておく事も有効です。

 

雨の日の散歩やシャンプーの後は、水分をしっかり拭き取り、その後は十分に乾かす必要があります。

 

もともとアレルギー体質であったり、皮膚が乾燥しやすく弱い体質の場合には、特に注意してお手入れを行う必要があります。

 

シャンプーや駆虫薬が皮膚に合っていない場合や、刺激が強すぎる場合には、皮膚に炎症が起こる原因になる場合がありますので、そのような洗浄液や薬剤を使用した後は、皮膚に異常が無いかどうか、よく観察しておく事も大切です。

 

そして、皮膚に何らかの異常が確認できた場合には、早いうちに治療を受ける事で、早期の改善につながります。